人により好みはありますが、大体の場合文字はおもしろいです。文字があるだけでそこに人がいることがわかります。予測変換などの機能も存在しますが、それをどう組み立てるのかは人次第。書いた人がいないと、本は成り立ちません。そして本に関わっているのは書いた人だけではありません。編集さん、装丁さん、印刷所さん、本屋さん。そして手にとって読んでいる私たち。省略しましたが、他にも関わっている方はたくさんいます。紙を作る方も、インクを作る方もいます。そんなものがたくさん詰まっている本が、おもしろくないわけはないと思うのです。小説の内容はもちろん、そういった本に関わる何かを想像することでワクワクします。どんな仕事にもドラマがあります。そんなものがたくさん詰め込まれた本がなにも訴えないわけはないのです。ちょっとタイトルが過激だとか、こういう本は自分のキャラじゃないと諦める必要はないです。全部おもしろいストーリーがあります。おもしろくない本はありません。おもしろくないと思ったらそれは自分の趣味とあわなかった、もしくは読む時期ではなかったということだと思います。楽しく本を読むことに制限は、ないです。どんどんたくさんの本を読んでいきたいです。
もう知ってるかな?読むごと読むごとに楽しさが増してくる、SSの底知れないミリョク!
どんな本でもおもしろい
ほの暗さの魅力
中原中也の詩は少し物悲しい雰囲気が漂っています。そのわりにサーカスやピエロ、人魚などのファンタジックな内容を取り上げていて、そのギャップに人は惹かれるのだろうかと感じてしまいます。かと思えば『骨』のように人間の体の部位に特化した詩もあります。その広範囲に渡る語彙が豊かなほの暗さを出し、人々の共感を得るのでしょう。パズルのピースがパチリと当てはまるように、中原中也の詩はすぅっと心に入ってきます。そういうマジックなのかもしれませんね。
中原中也は医者の家に生まれ、神童と呼ばれて育てられました。しかし詩の道を選び落第し、三角関係なども経験します。そんな中原中也のひとつひとつが、あのような詩を生み出していたのではないだろうかと勝手に推測してしまいます。中原中也といえば太宰治と不仲だったことも知られています。酒癖が悪かったらしい中原中也ですから、どんな会話をしていたのか気になるところです。中原中也は三十歳の若さで夭折します。文豪は長生きしないとも言われますが、まさに駆け抜けた人生ですね。その人生のはやさこそ中原中也の詩の雰囲気を醸し出しているような気もします。
長生きしない人生。そして子供にも先立たれる人生。そんな暗さは人間誰しも持っているもの。だからこそ中原中也の詩が愛されるのかな、と私は思います。
会話文だけで進むミステリー
地の文と会話文が織り交ざっているのが小説ですが、もちろん例外もあります。特に私が読んで面白かったのが江戸川乱歩の『疑惑』です。
酒癖の悪い父親が殺された青年と、その友人の会話だけで『疑惑』は進んでいきます。青年は家族に犯人がいると疑い、友人はそれをどうしたものかとひたすら聞きます。生前の父親のふるまい、疑いを持つ家族同士。そんな様子が青年の話す言葉からありありと浮かび、地の文があるよりもかえってリアリティをかもしだします。
こんなことが出来るのは江戸川乱歩だからでしょうか。会話文だけで引き寄せられる文章、見ごたえがありました。日に日に疲れていく青年を心配する友人もまたいいです。憔悴した時には誰かに話したくなる…それが青年にとっては友人だったのでしょう。友人は青年を心配しながら、話を聞きます。そして時折青年の考えを正しながら同じように考えます。その様もまたありありと浮かびます。会話文だからこそのリアリティがありました。
『疑惑』は創元推理文庫から出版されている『人でなしの恋』に収録されています。短編集で、その他の短編も江戸川乱歩らしいリアリティが溢れています。ぜひ一度手にとってみてはいかがでしょうか?
芸人交換日記というおはなし
黄色い地の色に寂れたポストの絵が描かれた表紙。芸人交換日記で感動の涙です。放送作家鈴木おさむさんによる『芸人交換日記~イエローハーツの物語~』は11年売れなかった芸人コンビ『イエローハーツ』の物語です。実在する芸人さんやリアルな事情がたくさん詰め込まれた、交換日記調に書いてある小説です。夢に向かう二人の姿を克明に描いているその文章が、胸をうちます。
ストーリーは11年売れなかったコンビ、イエローハーツが交換日記を始めるところから始まります。後がないから真剣に話す。そのための交換日記です。
ひたすら『○月×日 ○○へ』と書かれたあとの文章が続きます。けれどユーモアもあってシリアスさもあり、まったく飽きがきません。特に最後の方は涙なくしては読めません。私は読むたびに感動して泣いてしまいます。
イエローハーツの熱い思いと現実。大切なものと掴むもの。それらが明確に記されていて、胸が熱くなります。リアリティにあふれた内容だからこそ、かえって共感してしまう。夢に向かう勇気と現実に向かう勇気に心が震えます。がんばってもどうしようもないことも、がんばらなければ得られないものもある。そんなメッセージが伝わってくるかのようです。